実家のちかくにある吊り橋。
歩くと揺れるのが楽しい。
幼稚園に通ってた頃は、床木が腐り歯抜けになっていた。
ビビリのガキは、川下を覗き込みながらおっかなびっくり渡ったっけ。
そして、橋の袂には、ボクが小学生の頃でもまだバラック小屋が橋の袂にびっしり軒を連ねてた。
その不法建築の名は「原爆長屋」。
所以を知る由もなく、昼尚薄暗いその辺りは、なにやら不気味で恐る恐る前を通った。
その後、何度かワイヤーの張り替えや鉄製の欄干の塗り替えが行われ、今では手入れが行き届いている。
と、そんな感傷を吹き飛ばすような爆音が聞こえる。
ジェットスキーが、暴走族宜しく波をけたてて駆け抜けていく。
川底で眠る人々も、その賑やかさにさぞかし喜んでいる事だろう。
安田学園側のちいさな公園の片隅に、息絶えた人々の慰霊碑がひっそり建っている。
初出:「関心空間壱式」